一般にほくろと呼ばれているものの多くは母斑細胞母斑(色素性母斑)という良性腫瘍です。極めてまれではありますが、メラノーマ、基底細胞癌などの悪性腫瘍の可能性もあります。ダーモスコピー(拡大鏡)を用いて、悪性と良性をある程度まで見分けることができます。
■ 治療
外科的切除(手術)
色素が深い病変、およそ5㎜以上の大きい病変は、外科的切除(手術)を行います。局所麻酔を用い、10分程度の手術です。基本的に予約をいただきます。あらかじめ血液検査をしていただきます。(悪性を疑う病変の場合は、一部皮膚生検を行うか、大きな病院をご紹介させていただくこともあります。)
CO2レーザー治療(保険治療)
引っかかって困る、もしくは視野に入って邪魔などの、隆起した病変は健康保険範囲内でのCO2レーザー治療が可能です。
施術前
術後二週間
術後七週間
施術前
術後一ヶ月
施術前
術後1週間
術後2週間
術後2カ月
CO2レーザー治療 (自由診療)
主に平坦な病変をCO2レーザーで除去する場合は、美容の目的が大きくなり、保険適応外の治療になります(医師が判断します)。
施術前
術後10日
にきびは90%以上の人が経験するもので,病気ではない、と考えられる傾向にありました。また,欧米と比較し軽い症状がほとんどを占めることから,「にきびは青春のシンボル」とされ,医療機関への受診率は1割程度といわれています。当院では、保険診療をベースとして、自由診療も行っており、治療の成果を上げています。にきびは1つあっても気になるものです。悪化すると、にきび跡(瘢痕)になるケースもあります。にきび跡の治療も行っていますが時間と費用がかかりますので、跡にならないように、早い段階からしっかり治療していくと良いと思います。
■ 保険診療
■ 自由診療(美容皮膚科のページも参照ください。)
20歳代から出現し、60歳代では80%、80歳代でほぼ全員の人にみられます。老人性のいぼ(疣贅)です。顔・頭・体幹に多発する、2㎝くらいまでの灰褐色~黒褐色の隆起です。表面は、いぼ状・平滑・有茎状など種々で、手のひら・足の裏にはみられません。老人性色素斑(いわゆるシミ)と混在、もしくは、老人性色素斑から隆起してくることが多く、美容上問題となることもよくあります。
■ 治療
液体窒素による冷凍療法(保険治療の適応です。)
1~2週間おきに来院していただき、液体窒素をふくませた綿棒をいぼに接触させます。いぼが次第にかさぶたになってきて剥がれ落ちていくことで、除去していきます。
【メリット】
CO2レーザーによる治療(自由診療です。)
痛みを和らげるために、麻酔のテープを貼るか、局所麻酔を注射してからレーザーを照射します。いぼを削り取る治療法です。治療後は軽度の浸出液を伴うジクジクした傷になりますが、創傷治癒により、盛り上がり治ります。(傷がふさがるまで10日から2週間ほど、被覆材を貼って処置します。)赤み、色素沈着がでますが、徐々に消えていきます。
【メリット】
【デメリット】
皮膚の表面付近にできる直径1〜2mm以内の固い隆起で、中に角質が入っていて、白色の小さな粒のように見えます。顔、特に目のまわりに多く、また、小児や女性に多い傾向があります。
■ 治療
圧出法(保険治療の適応です。)
注射針の先などで皮膚を小さく切り開いて、内容である白色の球状物を押し出すか、あるいは攝子(ピンセット)を使って取り除きます。
【メリット】
【デメリット】
CO2レーザーによる治療(自由診療です。)
レーザーにて削り取る治療法です。
【メリット】
【デメリット】
粉瘤は皮膚の下に皮膚の袋ができ、その袋の中にアカ(角質)が貯まる良性の皮膚腫瘍です。中心に黒色状の開口部があり、これを臍と呼びます。臭うこともよくありますし、少しずつ大きくなってくることもよくあります。炎症を伴うと、膿がたまり、大きく腫れて痛むこともあります。良性のものですので、急いで切除する必要はないのかもしれませんが、小さいうちに切除してしまうのがお勧めです。
■ 治療
石灰化上皮腫とは、文字通り皮膚の一部が石灰のように硬くなる良性の腫瘍です。腫瘍の上の皮膚が薄い場合には石灰化した部分が黄白色や少し黒ずんで透けて見えたりすることがあります。ほとんどの場合無症状ですが、押すと痛みを感じたりすることもあります。皮膚がんなどの悪性腫瘍との違いは、悪性の場合はさわって動かそうとしてもほとんど動かないのに対して、石灰化上皮腫は、指などで動かすことができます。
石灰化上皮腫がなぜ起きるのか、はっきりとした原因は不明です。一般的には、毛を作るもとになる「毛母(もうぼ)細胞」が間違って増えすぎることによってできるのではないかと考えられています。そのため「毛母腫」という別名で呼ばれることもあります。
比較的若い人、特に小児の顔、腕、頸などに発生することが多いようです。
自然に治ってしまうことはありませんので、治療は外科的な手術となります。
中年以降の人の顔面にできやすく、急速に大きくなります。直径2cmほどの腫瘍で、半球状に盛り上がり中央部がへこんでいて、硬い皮で覆われています(中央臍窩と呼ばれる角化性の丘疹)。2cmほどになると、自然に縮みはじめて消えていくことがよくありますが、かなり瘢痕の残ることもあります。有棘細胞癌と似ていることもあり、良性腫瘍であるという考えと有棘細胞癌の特異型とする説もあります。ケラトアカントーマが疑われたら、自然消退を確認するため経過観察するか、または皮膚生検する場合でも治療を兼ねて全摘出します。
体幹や四肢に直径が1cm大までの大小の嚢腫が多発する疾患です。脂腺開口部の嚢腫なので、多発性脂腺嚢腫とも呼ばれます。ぷつぷつとした隆起で、粉瘤と似ていることもありますが、中央に臍がないことと多発していることで鑑別が可能です。良性腫瘍なので様子をみてもいいのですが、美容上の問題になることもあります。治療は手術的な摘出です。傷が目立たないように取り除く方法としては、3~4mmほどの小さめの穴を開けて(皮膚生検トレパンを使います)、少しずつ袋をくりぬいて取り除くのが良いと思います。
中年から高齢者の、主に額・頬・鼻周囲に2~5㎜ほどのやや黄色調~白色の隆起(丘疹または小結節)です。表面は平らで、中央が臍状にくぼんでいます。ときに中央から皮脂を排出します。ひとつだけのこともありますが、多発することがしばしばです。男性に多いと言われていますが、女性にもよくみることがあります。女性のほうが気にされて受診されるからかもしれません。顔面の毛穴に開口する脂腺が成熟して、ブドウの房状に増殖しておこるとされています。脂腺が増殖する原因は、多くは加齢による皮膚の変化と考えられています。治療は、局所麻酔後にCO2レーザーで蒸散します。(自由診療です。)
日光(紫外線)を浴び続けてきたことにより発症する皮膚疾患です。60歳以上の方で多く認められます。現在は有棘細胞癌の早期段階の病変(表皮内癌)と位置づけられています。転移を生じる危険性はなく、深部組織を破壊することもありませんが、一部は真皮内浸潤性の有棘細胞癌へと進展する危険性が出てきます。有棘細胞癌へ進展する確率は、1割とも2割とも言われています。高齢者特有の病気のため、高齢化社会の進行にともない、今後さらに増加することが予測されます。
紫外線の影響を直接受ける顔や頭がもっとも多く、手の甲などにも発症します。大きさは1~2センチほどの平らな赤い斑点で、表面にカサカサとした角質やかさぶたなどをともなう、赤くまだら状のシミとして見られます。紅斑型といわれ、最も多いタイプです。他に、色素沈着型(これはほぼ平らな事が多いですが、少々隆起しており褐色の斑点がまだらに生じてきます)、疣状型(隆起が大きくイボのようなに見え、皮膚の表面が角化して赤いことが多いです)などがあります。
信州大学名誉教授 斎田俊明先生が作られた日光角化症チェックシートです。
■ 日光角化症チェックシート
A:次のいずれかに当てはまりますか?
B:顔や手の甲などに次のようなものがみられますか?
※Aに当てはまる人に B のいずれかの状態がみられたら、日光角化症の疑いがあります。治療としては、切除あるいは液体窒素による凍結療法が一般的でしたが、最近イミキモド(ベセルナ)という塗り薬での治療が可能になりました。週3回患部にすり込むようにして十分に外用し、そのまま静置して8時間後に洗い流します。4週間塗布し、4週間休薬、必要であればさらに4週間外用します。(塗布後、塗った部位に紅斑(赤み)、痂皮(かさぶた)、落屑(皮膚の一部がフケ様にはがれる)などを伴うことがあります。)病変が大きかったり、数が多い場合は、CO2レーザーで蒸散する方法もあります。
最も頻度が高い皮膚癌です。高齢者の顔面に好発します。原因として、日光や外傷、放射線、瘢痕などとの関連性もあります。眼のまわりや鼻、耳の周囲などに好発する黒色から灰黒色の盛り上がりで、ゆっくり増大するとともに中央が崩れて潰瘍をつくるようになります。また、辺縁では蠟様光沢のある灰黒色のぶつぶつ(小結節)が縁取るように配列するのが特徴とされます。以上のような症状は悪性黒色腫でもみられるため、視診だけでは鑑別が困難な場合もあります。ほくろや加齢によるイボと鑑別も要します。
治療は、外科的切除が基本です。転移は稀ですが、切除しない限り正常組織を破壊しつつ増殖しますし、また、顔面に好発することから、切除後の再建に形成外科的手技(皮弁や植皮)を要することが多いこともあり、早期の外科的治療が大切となります。
数㎜~2㎝くらいの、肌色~褐色調のやや硬い隆起で、大腿、腕によくできます。虫刺されや傷から発生することがあります。単発性が多いですが多発例もあります。圧痛を伴うことがあります。治療は外科的切除です。悪性腫瘍でないことが明らかな病変の場合は、経過観察でも問題ありません。
首や脇の下に多発する1~2mm位で肌色~淡褐色の扁平~懸垂性の良性の皮膚腫瘍です。中年以降に多く見られるので、加齢による皮膚変化と考えられていますが、思春期以降の場合は肥満者の摩擦部位にできやすいため、物理的刺激も要因とされています。スキンタッグ・アクロコルドンと呼ばれることもあります。
下唇にできる場合と、手足の指にできる場合があります。いずれも外傷がきっかけとなることが多いようです。10㎜くらいまでのドーム状の隆起で、ゼリー状の粘液が入っています。唇の場合は、CO2レーザーを使った切除が侵襲少なく良いと思います。仕上がりもきれいです。手足の指の場合は、爪の近くのことが多いので切除術は難しい部位です。18Gなどの針で穿刺し内容物を圧出する方法も良いのですが、1か月くらいでまた再発します。液体窒素で凍結療法を行う方法ですと、治癒例もあります。